翻訳者に資格は必要?2017年3月開始の翻訳者登録制度で重要度が上がる?
「在宅翻訳者になるために資格は必要ですか?」
「在宅で翻訳の仕事をしたいのですが、おすすめの資格はありますか?」
「こぐまさんは翻訳関連の資格をお持ちですか?」
そのような質問を受けた時、今までは「翻訳関連の資格はいくつかありますが、資格がなくても在宅翻訳の仕事をしてる人はたくさんいます」「私は翻訳関係の資格は持っていませんが在宅で医療翻訳の仕事を受けていますよ」などと回答していました。
しかし、将来的には状況が変わる可能性もあります。
今回は、翻訳関連の資格と2017年3月10日にスタートした「翻訳者登録制度」により資格の重要性が変わる可能性などについて、まとめてみました。
目次
翻訳関連の資格で知名度が高いのは?
翻訳関連の資格はいくつかありますが、知名度が高いのは、
- 日本翻訳連盟による「JTFほんやく検定」
- サン・フレア アカデミーによる「翻訳実務検定TQE」
- 日本翻訳協会による「JTA公認翻訳専門職資格試験」
ではないでしょうか?
この3つはいずれも歴史が古く、語学力だけではなく翻訳者として必要な能力を評価する資格として翻訳業界でも一般的に認められています。
まずは、この3つの資格について、簡単に説明します。
JTFほんやく検定
「JTFほんやく検定」の概要
「JTFほんやく検定」は社団法人日本翻訳連盟(Japan Translation Federation)が認定する資格です。
20年以上の歴史を誇る検定試験で、客観的な評価基準から、ビジネスの現場で通用する翻訳であるかという商品価値をプロの目線から厳しく評価されます。
「JTFほんやく検定」の試験概要はこちらです。
資格試験実施日 | 年2回実施(1月と7月の第4土曜日) |
分類 |
|
言語 | 英語のみ |
実施機関 | 社団法人日本翻訳連盟 |
公式サイト | http://www.jtf.jp/jp/license_exam/license.html |
実用レベルは、「政経・社会」「科学技術」「金融・証券」「医学・薬学」「情報処理」「特許」の6分野の中から1分野を選択します。
インターネットを使用して自宅で受験することが可能で、試験中に辞書、参考書、用語集などは自由に使用できます。
「JTFほんやく検定」を取得するメリット
「JTFほんやく検定」の実用レベル2級以上に合格すると、日本翻訳連盟の公式サイトの「検定合格者リスト」とJTF機関誌「日本翻訳ジャーナル」に自己プロフィールを掲載できるという大きな特典があります。
日本翻訳連盟の翻訳会社から直接仕事を得ることも可能です。
また、翻訳業界でも信頼度の高い資格として認められているので、翻訳会社に応募する際に履歴書などに記載することで、合格の確率が上がるという効果も期待できるかもしれません。(あくまでもトライアルの結果が重視されますが)
ただし、「JTFほんやく検定」の実用レベル2級以上は合格率5%以下という難関だと言われています。
翻訳実務検定TQE
「翻訳実務検定TQE」の概要
「翻訳実務検定TQE」は大手翻訳会社のサンフレアが即戦力になる翻訳技術を持つ方を「翻訳実務士」として認定する資格制度です。
7言語・16分野をカバーし、各専門分野ごとに「言語解釈力」や「文章作成能力」について厳しく評価されます。
企業内での英語の実務能力の評価にも活用されているそうです。
「翻訳実務検定TQE」の試験概要はこちらです。
資格試験実施日 | 年4回実施(3月・6月・9月・12月) |
分類 |
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分野 |
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言語 |
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実施機関 | 株式会社サン・フレア |
公式サイト | http://tqe.jp/index.html |
文芸以外は、和訳と外国語訳の両方向の試験があります。
試験は、TQE受験サイトから試験問題をダウンロードし、48時間以内に提出するという形式で行われます。
JTFほんやく検定と同様に自宅で受験することが可能で、試験中に辞書、参考書、用語集などは自由に使用できます。
「翻訳実務検定TQE」を取得するメリット
翻訳実務検定TQEの3級以上に認定されると認定証が授与され、産業翻訳に関する情報や翻訳業務に役立つアドバイスが提供されます。
また、試験実施期間である大手翻訳会社サン・フレア社に翻訳者として登録できるというメリットがあります。
TQEも、翻訳業界内では知名度・信頼度ともに高いので、翻訳会社に応募する際に履歴書などに記載することが合格の確率を高める効果は期待できそうです。
ただし、TQEも3級以上は難易度が高いと言われています。
サン・フレア社の公式サイトによると、「サン・フレアの上級講座修了生でも合格率は大体15~20%」だそうなので、全体的な合格率は15%を下回ると思います。
JTA公認翻訳専門職資格(Certified Professional Translator)
JTA公認翻訳専門職資格の概要
「JTA公認翻訳専門職資格試験」(CPT試験)は翻訳の世界標準を目指す組織である一般社団法人日本翻訳協会(Japan Translation Association)が認定する資格です。
日本語では「JTA公認翻訳専門職資格試験」、英語では「Certified Professional Translator Test 」、通称「CPT試験」と呼ばれているようです。
JTAにはいくつかの資格がありますが、実務翻訳分野の「JTA公認 ビジネス翻訳能力検定試験」の概要はこちらです。
資格試験実施日 | 年1回実施 |
分類 |
|
分野 |
|
言語 |
|
実施機関 | 一般社団法人日本翻訳協会 |
公式サイト | http://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam.html |
「JTA公認翻訳専門職資格」を取得するメリット
「JTA公認 ビジネス翻訳能力検定試験」で2級以上を取得し、かつ「JTA公認 翻訳専門職資格試験」という試験の第1科目「翻訳文法技能試験」、第2科目「翻訳IT技能試験」、第3科目「翻訳マネジメント技能試験」に合格し、実績審査(翻訳実務経験2年以上)に合格すると「JTA 公認翻訳専門職(Certified Professional Translator)」と認定されます。
日本翻訳協会は世界で通用する翻訳者を認定するための国際標準を目指し、「JTA公認翻訳専門職資格試験(CPT試験)」の翻訳専門職の能力要件を以下の5つのコンピタンシーとして定義しています。
・言語変換能力(Language Competence)
・異文化理解力(Cultural Competence)
・専門実務翻訳能力(Expertise Competence)
・IT運用能力(IT Competence)
・マネジメント能力(Managerial Competence)
そのため、「JTA公認 ビジネス翻訳能力検定試験」以外にも「JTA公認 翻訳専門職資格試験」の指定された3科目に合格する必要があるようですが、JTFほんやく検定やTQEと比較すると少し複雑ですね。
ただし、国際的にはJTFほんやく検定やTQEより知名度が高い可能性もあり、海外のエージェントと直接取引したり外資系の翻訳会社に応募したりする場合には有利なのかもしれません。
翻訳関連の資格の重要性
資格がなくても翻訳の仕事は可能
知名度が高い翻訳関連の資格として
- 日本翻訳連盟による「JTFほんやく検定」
- サン・フレア アカデミーによる「翻訳実務検定TQE」
- 日本翻訳協会による「JTA公認翻訳専門職資格試験」
をご紹介しましたが、いずれもプロとして認められる階級は難易度が非常に高いと言われています。
そのため、既にプロとして翻訳の仕事をしている方でも不合格となるケースも多いようです。
私自身は翻訳関連の資格は一つも持っていません。
いつかチャレンジしたいという気持ちはあるものの現状は仕事に追われる毎日で、試験対策を十分にする時間の余裕もなく、資格の必要性も特に感じないという状況です。
私以外にも、翻訳関連の資格は持っていないけれど、フリーランスの在宅翻訳者として活躍されている方はたくさんいらっしゃると思います。
「翻訳者登録制度」により翻訳関連資格の重要度は高まるかも?
しかし、そんな状況が変わる可能性が出てきました。
2015 年5月に発行された翻訳サービスに関する国際規格「ISO17100」に基づき、2017年03月10日から「翻訳者登録制度」がスタートしたのです。
「翻訳者登録制度」は、国際規格「ISO17100」で規定された翻訳サービスの品質を保つため、専門的なスキルを有する翻訳者を第三者機関(日本規格協会 翻訳者評価登録センター)が評価して登録する資格制度のことです。
「ISO17100」の内容について、一般財団法人日本規格協会公式サイトには以下のように記載されていました。
2015 年に翻訳サービスに関する国際規格としてISO17100 規格が発行されました。ISO17100 とは、翻訳サービスの品質に直接影響を及ぼす翻訳プロセスのあらゆる側面に対する要求事項を規定した国際規格であり、国内でも翻訳サービス提供組織に対する第三者認証が既に始まっています。この規格では、翻訳者に対する要求事項(専門的力量)が明確に規定されており、翻訳者の力量が重視されています。
ISO17100:2015は、翻訳サービスの品質及び引渡しに直接影響を及ぼす翻訳プロセスのあらゆる側面に対する要求事項を規定した国際規格です。(2015年5月に発行)
品質の高い翻訳サービスに必要な、コアプロセスの管理、翻訳者等の資格・力量に関する最低限の要求事項、資源の可用性及び管理、その処置について翻訳サービス提供者(TSP:Translation Service Provider)を対象に規定しています。
「翻訳者登録制度」は「翻訳試験検定実施機関」に認定された機関が実施する資格試験に合格すると登録できるようです。
2017年03月に開始されたばかりなので、まだ「翻訳試験検定実施機関」として認められた機関については公表されていませんでした。
翻訳関連の資格・重要性まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、翻訳関連の資格と2017年3月10日にスタートした「翻訳者登録制度」により資格の重要性が変わる可能性などについて、まとめてみました。
「翻訳者登録制度」の創設により、今後はフリーランスで活躍する翻訳者にも「翻訳者登録制度」への登録が求められるようになるかもしれません。
今までは「医療翻訳者になるためには資格が必要ですか?」という質問に対して、「特に必要ないと思います」という回答をしてしまいましたが、将来的には状況が変わる可能性が出てきました。
今後の「翻訳者登録制度」の動向は気にしておきたいと思います。
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