医師に必要な英語力とは?

英語の必要性-イメージ

医師なら英語ができて当たり前と思っている方も多いかもしれませんが、実際に英語がペラペラな日本人医師はそれほど多くはないようです。

今回は医師に英語が必要と考えられる理由や英語の必要性についての現場の医師の意見などをまとめてみました。

医師に英語が必要な理由

経済産業省が公開している「平成 27 年度医療技術・サービス拠点化促進事業(日本の医療技術・サービスの海外展開に関する調査) 報告書」によると、日本の優れた医療技術・サービスの国際展開は、経済成長を図る上での重点施策の1つとして位置づけられているそうです。

以前の民主党政権時代は、外国人患者の受け入れ(インバウンド)が推進されていたのに対して、安倍政権になってからは、日本の医療技術・サービスの海外展開(アウトバウンド)を推進しているようですね。

2013年6月の「日本再興戦略」には

新興国を中心に日本の医療拠点について、2020年までに10カ所程度創設し、2030年までに5兆円の市場獲得を目指す

という具体的な目標が掲げられています。

医療の国際展開が日本の経済政策に盛り込まれているということは、英語力のある医師が活躍する場は今後ますます増えていくのではないでしょうか。

論文投稿や国際学会には英語は必須

主要の医学ジャーナルは全て英語

過去には、医者にはドイツ語が必要という時代もありましたが、現在は医学分野の事実上の国際共通言語は英語です。

以下の世界五大医学雑誌をはじめ、主要な医学ジャーナルは全て英語で投稿されています。

  • 「New England Journal of Medicine」(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)
  • 「The Lancet」 (ランセット)
  • 「Annals of Internal Medicine」(アナルズ・オブ・インターナル・メディシン)
  • 「BMJ (British Medical Journal) 」(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)
  • 「JAMA (Journal of the American Medical Association) 」(ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション)

つまり、最新の医学情報を得るためには英語で書かれた論文を読むためのリーディングスキルが必要ということになります。

国際学会の口頭発表でも英語力は必須

また、海外の医学ジャーナルに論文を投稿する場合、英語で論文を書くための高度な英文ライティング能力が求められます。

日本人の場合、内容が素晴らしくても、論文に相応しい英文がかけないために、海外の医学ジャーナルに投稿してもアクセプトされない場合もあるようです。

国際学会で口頭発表をするということになると、さらに高度なスピーキング能力、質疑応答をこなすためのヒアリング能力や臨機応変な対応ができる英会話能力も必要となります。

英語の必要性についての現場の医師の意見は?

医師の意見-イメージ

日本人医師に英語は不要という意見

「英語力がある医師は海外の医学ジャーナルに論文を投稿したり、国際学会で口頭発表をしたりして国際的に活躍できるだろうけど、自分には英語は必要ない」という医師の方もいらっしゃるようです。

医師のための総合医療情報「m3.com」が実施したアンケート調査によると、現役の医師の方々からは日本語が通じない外国人の診察については意見が割れたそうです。

中には「医師に英語は不要」ともとれるような意見もみられました。

例えばこのような意見がありました。

  • 日本語が通じない外国人は診療不可と受付で説明している。【開業医】
  • 診察室に入った後の全ての行為を録音しているアメリカ人(白人)がいました。外国人、特にアメリカ人は権利者意識が強いので、たとえ多少英語が使えるドクターでも、思わぬところで足をすくわれる可能性があり、通訳なしでの診療は危険と思います。「郷に入っては郷に従う」、つまり、日本では日本語で話すのが基本であることを彼らにもしっかり分からせるべく、私は一切の外国語での診療には応じていません。【勤務医】
  • 私たち日本人は外国へ行くとき、その国の言葉を少しでも勉強して行きます。日本に来るなら日本語の勉強をして来いというのが私の考え。【開業医】
    引用元:総合医療情報「m3.com」公式サイト

「日本では日本語で話すのが当たり前」という考えをお持ちの医師の方も複数いらっしゃるようです。

開業医の場合、日本語が通じない外国人の方をお断りすることもできますが、勤務医は難しいのでは?と思いましたが、実際は「私は一切の外国語での診療には応じていません」という勤務医の方もいらっしゃいました。

医療現場では、ほんの少しの勘違いが医療事故を招く場合もあるため、日本語でコミュニケーションがとれない患者はお断りというスタンスはある意味、正しいかもしれません。

英語はやっぱり必要という意見も

一方、医師であれば英語力は必要という意見もありました。

  • 若かりし頃、赤十字病院で勤務していた時、真夜中に訪れた外国人の患者に、つたない英語で何とか対応したが、帰り際に、「私は世界中を旅しているが、医師であればどこの国の医師でも英語ぐらい話せる、医師なのにこんなに英語ができないなんて。日本の医師は皆そうなのか?」と捨て台詞を言われた。「『日本には郷に入れば郷に従え』という諺がある。日本を旅行するなら少しくらい日本語を勉強してくるのが当たり前ではないか」と言い返したかったがそれも英語で言えないので、ぐっと飲みこんだ思い出がある。しかし、その後、自分が英語圏でない国を旅行した時に、ホテルや交通機関で英語だけで通そうとしている自分の矛盾した行動に気付き、英語を勉強し始めた。【勤務医】
  • 今現在は学習のおかげで言われていることは理解可能 になったが、それ以前のカタコトだった時期でも「医者のくせに英語も分からないのか」と言う悪口を言われているのは理解できた。【勤務医】
    引用元:総合医療情報「m3.com」公式サイト

「私は世界中を旅しているが、医師であればどこの国の医師でも英語ぐらい話せる」という外国人患者の言葉は気になりますね。

医師は助けを必要としている患者を救うことが使命なのだから、事実上の国際標準語とも言われている英語を話せるのは当然ということなのでしょうか。

本業だけでも大変な医師に英語力まで求められるのは厳しいようにも感じますが、世界中を旅しているという方の意見は真摯に受け止めたいですよね。

医師に最低限必要な英語力は?

日本では深刻な医師不足という問題もあり、多くの医師は本業だけでも多忙で、英語の勉強などする余裕はないかもしれません。

しかし、日本で病院を訪れる外国人の立場になって考えると、日本語が話せないからといって診察を断られてしまうと、非常に心細い気持ちになりますよね。

先ほど、ご紹介した「m3.com」が実施したアンケート調査の中には、「外国語が話せなくても、9割以上ジェスチャーで何とかなる」という意見もありました。

恐らく外国人の患者さまに対応した経験からのコメントかと思います。

「言葉がわからないまま診察するなんて危険だ。無責任だ」という非難もあるかもしれません。

ですが、体の具合が悪くて自分のもとを訪れた患者さまを門前払いするのは、やはり医師として問題があるのではないでしょうか?

「英語がペラペラ」というネイティブレベルの英語力を目指すのは時間もかかりますし、現実的に難しいかもしれません。

でも、ジェスチャーやイラストなどを利用して、最低限の英語で外国人の患者さまとも意思疎通を図れるような工夫をすることは、それほど労力をかけずにできることかもしれません。

こちらの記事では、東大病院で働く医療スタッフが医療現場で本当に必要な英会話を厳選してまとめた本をご紹介しています。

医療現場で必要な英会話が学べる本「東大病院発医療スタッフのための英会話」

この本の中には、「Do this.」(このようにしてください)、「Copy me.」(私の真似をしてください)など非常に簡単なフレーズで外国人の患者さまとコミュニケーションがとれるイラストが充実しているので、英会話が苦手な医師にもおすすめです。

医師に必要な英語力まとめ


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今回は医師に英語が必要と考えられる理由や英語の必要性についての現場の医師の意見などをまとめてみました。

日本にいる外国人が全て英語が話せるわけではありませんが、世界中の約4人に1人が話せると言われている英語を習得すれば、外国人の患者さまが来院しても対応できるケースが増えると思います。

また、英語の論文を読むことができれば、海外の医学ジャーナルから、まだ和訳されていない最新の医学情報を得ることもできます。

本業で忙しい中、英語を勉強するのは大変かもしれませんが、これから英語を習得したいという医師の方はぜひ少しずつでも取り組んでみてはいかがでしょうか?

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